ウイスキーの製法~ウイスキーの造り方を分かりやすく説明~

お酒
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普段口にしているウイスキー。お酒であることは勿論ですが、これってどうやって作られているんだろう?とふと思ったことは無いでしょうか。

簡単に説明すると下記手順で作られます。

・製麦⇒糖化⇒発酵⇒蒸留⇒貯蔵・熟成

「…うーん、糖化とか蒸留とか、、、普段使わない言葉であんまりイメージが沸かない」

そう思う人も多いはず。

私も実際、22歳くらいまではお酒に興味が全くなく、興味本位で「どうやって作られてるの?」と調べても、難しい単語の連続であまり興味が持てなかった過去があるので、その感覚、凄く分かります。

そんな私ですが今は立派な酒飲み。

この記事では、「その単語何?」ってところまで分かりやすくかみ砕いて説明していくので是非チェックしてみてください。

この記事を読んだ後には、「ウイスキーって樽に詰めて熟成するまでは無色透明なんだよ」と雑学を語れるようになりますよ。

長い年月をかけて作られるウイスキーについて、詳しく解説していきます。

ウイスキーの作り方

ウイスキーの原料は、水、酵母、穀物の3つが基本。

それ故に水や風土のこだわりで、ウイスキーの味わいに変化が現れます。

これらの原料を「①製麦⇒②糖化⇒③発酵⇒④蒸留⇒⑤貯蔵・熟成」の順で行うとウイスキーとなりますが、蒸留所ごとに様々なこだわりがあります。

では、それぞれの工程でどのような作業があり、またそれがウイスキー作りにどのように関係してくるのでしょうか。

今回の記事では、モルトウイスキーの場合の作り方を説明していきます。

モルトウイスキー・グレーンウイスキー・ブレンデッドウイスキーの違いはコチラの記事からどうぞ

①製麦(モルティング)

ウイスキーの原料は大麦やトウモロコシなどの穀物です。

大麦のみを原料とした場合、モルトウイスキーと呼ばれ、トウモロコシなどの穀類を原料にして作られたウイスキーをグレーンウイスキーと言います。

モルトウイスキー・グレーンウイスキー・ブレンデッドウイスキーの違いはコチラの記事からどうぞ

モルトウイスキーの場合、二条大麦に水を含ませてこれを発芽させ、大麦麦芽(モルト)を作ります。

このモルトを作ることを「製麦(せいばく)」あるいは、「モルティング」と呼ばれます。

何故、発芽させるの?

二条大麦を何故、発芽させる必要があるのか?

それはお酒造りに欠かせない「発酵」を進みやすくするためです。

大麦に含まれるデンプンは、そのままでは酵母によるアルコール発酵が進みません。しかし、なんとビックリなことに、大麦は発芽するときにデンプンを分解する酵素を自ら作ることが出来ます。

そのため、ウイスキー作りでは大麦を発芽させ、大麦麦芽(モルト)としてからウイスキー作りが始まります。

※ちなみに日本酒や焼酎などは麹で米のデンプンを分解して、アルコール発酵させています。

詳しい手順をまずは図解でご紹介します。

収穫した大麦はすぐには発芽しないため、1~2ヶ月程休ませます

その後、大麦の粒を均一にするため、大麦を3段階程度に分け、水に浸ける→空気にさらす。を繰り返して発芽を促します。これを【浸麦(しんばく)】と言います。

続いて、12℃~18℃に保った湿度の高い発芽室へと移動させます。

大麦を絶えず攪拌して空気を含ませることにより、更に発芽を促します。

この工程は、現在は機械で行われる事が一般的ですが、床に広げた大麦を木製シャベルで数時間置きに撹拌する「フロアモルティング」という伝統的な方法のままを貫いている蒸留所もあります。

5~7日間これを行い、芽が適当な長さまで育ったら、ここで発芽を完了します。発芽が進みすぎるとその後の糖化や発酵に悪影響が出てしまうからです。

続いて、発芽した大麦は「キルン」と呼ばれる乾燥塔で、下からピートと呼ばれる燃料を燃やし、乾燥させます。

ピートとは?

ピートとは、シダ類やコケ類などの植物が枯れて堆積し、長い年月をかけて自然に炭化してできた泥炭のことを言います。ウイスキー作りに使われる際には、このピートを天日で干して乾燥させてから燃料として使います。

日本では馴染みの無いこのピートですが、スコットランド地方では島の1/4をこのピートと呼ばれる泥炭に覆われています。

このピートを燃料として燃やし、その熱風で大麦を乾燥させます。この工程でピートの香りが付くわけです。

ピートの香りは、薬品臭(ヨードの匂い)と例えられることが多く、この香りが好きなウイスキー好き以外が飲むと多分、「イソジンの匂い!」と吹き出すこと間違いなしです。

ただ、一度この香りにハマると抜け出すことが出来ない魅力があるんです。

ちなみに、宮城県のニッカウイスキー蒸留所の見学に行った際に、撮影した「キルン棟」がこちらです。▼▼

宮城県の蒸留所に訪れた際のキルン棟の写真

宮城蒸留所に行った時の話はコチラから

②糖化(マッシング)

宮城蒸留所の工場内の画像です

続いて、モルトに入ってしまったゴミなどを取り除き、モルトのもろみの大きさの違いで3種類に分けられます。

粒の大きい順に「ハスク」「グリッツ」「フラワー」といい、これらすべてを「グリスト」と総称します。

続いて、このグリストを67℃~70℃の温水と混ぜ合わせ、「マッシュ」と呼ばれるような粥状にし、マッシュタンと呼ばれる糖化槽に入れられます。

ここでは熊手状の機械で絶えず撹拌を行うことで、糖化を進めていきます。(工場の映像とかでよく見るような混ぜ合わせる機械を想像してくれれば良いです)

この糖化の段階で、デンプンが糖に変わると共に、大麦に含まれるたんぱく質もアミノ酸へ分解されます。このアミノ酸もウイスキーの風味に影響を与える要因になります。

糖化が終わったマッシュは、底の方から濾し出し、麦汁と呼ばれる甘い液体が生まれます。

一番最初に濾し出された麦汁は一番麦汁と言い、糖度が約20℃もあります。続いて同様の手順を行い二番麦汁、三番麦汁と、採取します。

※蒸留所によっては四番麦汁まで取るところもあるとか

③発酵

前工程で採取した麦汁を20℃前後に冷却し、ウォッシュバックという発酵槽に移して、酵母(イースト菌)を添加します。

これで発酵が始まり、発酵による発生する炭酸ガスで激しく泡が立ってきます。トータルで48時間~72時間ほどかけて発酵を終え、アルコール分7~9%ほどの発酵液「もろみ」が出来ます。

発酵とは、酵母が糖を食べて、アルコールと炭酸ガスを生成することであり、酵母はこのとき、たくさんの香り成分を作り出します。

そのため、ここで入れる酵母の種類や発酵条件によって、さまざまな香りが生まれます。また、ウォッシュバックの材質の違いでもウイスキー作りの風味に影響を与えます。

酵母とは?

酵母とは、イースト菌とも呼ばれる微生物の1つです。発酵を進めてくれる便利なやつ、です。

大きさが約5~10ミクロンの単細胞生物で、その種類は300種類以上もあります。自然界では樹液や花の蜜、果実などに生息しています。

お酒の種類によって作り方に適した酵母があり、酵母をお酒の特性で使い分けています。

ウイスキーによく使われる酵母は、「ディスティラリー酵母」と呼ばれるものです。

ウイスキー作りに使われる酵母の特徴としては、発酵までの時間が早いのと、発酵による生成される香りがウイスキーに適していたため、ウイスキー酵母として多くの蒸留所で使われています。

※ビール酵母とかワイン酵母とか聞きますが、これらはそれぞれビール作りに適した酵母、ワイン作りに適した酵母、と言った感じ

④蒸留

宮城県にあるニッカウイスキー蒸留所に見学に行った際に撮影した「ポットスチル」

蒸留工程では、発酵工程で作ったもろみを画像のようなポットスチルと呼ばれる蒸留器で蒸留します。(※画像は宮城県の宮城蒸留所の見学の際に撮影したポットスチル)

蒸留とは、水とアルコールの沸点の差を利用して、アルコール成分を取り出すことです。また、蒸留の目的は、発酵でできたもろみ(アルコール度数7~9%)を、度数の高いお酒にすることです。

水の沸点は100℃なのに対してアルコールの沸点は78.3℃程度です。そのため、ポットスチルに入れたもろみを加熱し始めると、先に沸点が低いアルコール成分から水蒸気になり始めます。

その蒸気が上昇していき、ポットスチルのラインアーム部分の方に流れ、その後冷却器で冷やされます。

このように、気化した蒸気を冷やすことでアルコール分の高い液体を抽出することができるのです。(下記の画像も参考に蒸留過程をご覧ください)

つまり、下記のように液体→気体→液体となることで、余分な糖類などがそぎ落とされて、純度の高いアルコール分(ウイスキーの素の液体)を抽出しているんです。

ウイスキーの蒸留過程による変化

もろみ(液体)→アルコール分から先に水蒸気へ(気体)→冷やされたことにより水蒸気からアルコール濃度の高い液体へ(液体)

この時点のアルコール度数は65~70%ほど。

今回ご紹介している蒸留器は単式蒸留器と呼ばれ、この蒸留器で2回蒸留を繰り返すことにより、無色透明な原酒が生まれます。

また、面白いもので、ポットスチルの形や大きさなどによって、ウイスキーの味わいに変化が現れます。スコッチウイスキーでは2回蒸留することが基本で、1回目を初留、2回目を再留といいます。

この時点では、ウイスキーは無色透明です

⑤貯蔵・熟成

熟成工程では、蒸留が終わった無色透明の原酒を樽に詰めることから始まります。

ちなみに蒸留したての原酒のことを「ニューポット」と呼びます。

このニューポットのアルコール度は65~70%近くありますが、加水して63%前後に調節してから樽に詰めます。その後、熟成の倉庫に運んで貯蔵されます。

樽に詰めて長期間熟成させることで、樽由来の成分や香りがニューポットの中に溶けだし、ウイスキーの特徴である輝かしい琥珀色に変化します。

貯蔵樽には、ワインやバーボンなどを使用した後の、使用済みの樽が使われます。この熟成する樽によっても味わいや香に変化が出てきます。

熟成はウイスキー作りの最後の工程でありながら、そのウイスキーの特徴が出る一番大事な工程。

使用する樽の種類や場所や熟成期間、気候など、様々な条件によりその味わいが変化していきます。

熟成中の樽の中ではウイスキーに何が起こっているの?

樽に詰めることで、樽の木材の香りが付くことは勿論のこと、樽の色素成分が溶け出し、ウイスキーの琥珀色に変化していきます。

また、木材で出来た樽は、周囲の空気を取り込んで呼吸しているため、貯蔵する場所の気候や風土が影響します。同じ貯蔵庫でも置かれている場所(地面に近いのか、高い場所なのか…等)によっても細かに違いが生まれます。

様々な状況が重なって、ウイスキー独自の味わいや香りになっていきます。

まとめ

ウイスキーが作られていく過程は以下です。

ウイスキー作りのまとめ
  1. 製麦…大麦に水を加えて発芽させる
  2. 糖化…発芽した麦芽を乾燥させ、砕いて水と混ぜ、お粥みたいにする
  3. 発酵…酵母という発酵を進めるやつを入れて、もろみを作る
  4. 蒸留…もろみから、蒸留でアルコール成分を抽出する
  5. 貯蔵・熟成…抽出したアルコール成分を樽に詰めて保管して熟成させる

原材料である大麦を発芽させたり、乾燥させたり、、、ウイスキーとして飲むまでにはかなりの長い道のりがあることが分かりました。

特にスコッチウイスキーと言われるものは、最低でも熟成期間3年を設けないと「スコッチウイスキー」と名乗れないため、ウイスキーとして我々が口に含むまでは凄い時間と手間がかかってるんだな…と、再認識しますね。

また、ウイスキーって最初からあの琥珀色なわけではなく、樽に詰めることで熟成が進み、琥珀色に変化するのも初めて知った方もいるのではないでしょうか。

知れば知るほど奥深いですね。この記事で、少しでもウイスキーの作り方についてイメージが出来れば嬉しいです。

ここまでお読みいただきまして、ありがとうございました。

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