こんにちは。
モルトウイスキー作りに欠かせない蒸留器「ポットスチル」について、色んな蒸留所で実に様々な形や大きさのものがありますよね。
このポットスチルの違いにより、ウイスキーが力強い味わいになったり、軽やかな味わいになったりします。
これ、よく出回っている情報ではありますが、その根拠は何?と疑問に思った人は私だけではないはず。
そこで、今回の記事ではどこよりも、「ポットスチルの形状がもたらすウイスキーの味わいの違い」について、分かりやすくご紹介しているので、疑問に感じている方はご覧くださいませ。
ポットスチルとは?
ポットスチルとは、画像のような銅製の、ウイスキーを蒸留するときに使われる機器です。
画像の丸い部分が本体になりますが、ここにウイスキーの素となる液体を入れて、下から加熱することにより、アルコール分を抽出していきます。
イメージしにくい方は下記の画像をご覧ください。
ざっくりとウイスキーのポットスチルを用いた蒸留方法のイメージが掴めるかと思います。
▼ウイスキー作りの製法について、詳しく知りたい方はコチラの記事から
このポットスチルについて、各ウイスキー蒸留所で様々な形があります。
例えば、ニッカウイスキーの宮城蒸留所のポットスチルはこんな感じです。
一番最初の画像のポットスチルとは、微妙にこちらの方が、くびれ部分がある感じになってますよね?
こんな感じで、各蒸留所で、ポットスチルの形状は異なります。
大きさは勿論のこと、ヘッドと呼ばれる部分が、ストレートになっているのか、丸く膨らんだ形状になっているのか、そこから伸びるラインアームの長さや向きなど…挙げ出せばキリがないほど違いがあります。
今回は、この違いによりウイスキーの味わいがどのように変化するのかを紹介していきます。
ポットスチルの形状
ポットスチルのよくある形状を説明する前に、まずはポットスチルの名称を簡単に説明します。
ヘッドと呼ばれる部分が、まっすぐ伸びていて、その後続いてるラインアームまでなんの丸みも無いものを「ストレート型」といい、逆にここの部分に膨らみがあるタイプを「ランタン型」や「バルジ型」と言います。
今回は、このヘッド部分の形状についての違いを特に掘り下げていこうと思います。
ストレート型
画像のように、ヘッド部分がまっすぐに伸びているタイプをストレート型と呼びます。
ストレート型のポットスチルで作られたウイスキーは、力強く、ヘビーな酒質になります。
何故そうなるのか?
ポットスチル内で加熱されたウイスキーの素となる液体は、蒸気となり、まずこのヘッド部分にいきます。
ストレート型だと、このストレート部分から、そのまま上へ上へと蒸気が上りやすく、蒸気が再びポット内に落ちることなく、ラインアームの方へ向かいます。
そのため、蒸気はダイレクトにラインアームへ向かう率が高くなり、ウイスキーの原料やピートの香りや味わいが残りやすいと言われています。
バルジ型
ストレートタイプと違い、真ん中に膨らみがありますよね?
これをバルジ型といいます。
ストレート型とは異なり、この丸い部分に蒸気が溜まって、それから更に上へ上へと蒸気が上ります。
このとき、ストレート型はそのまま上へと蒸気が上りやすいですが、このように丸い形状のものだと、蒸気が水滴となり、再びポット内に戻ることで、再度加熱されます。
これを還流(かんりゅう)と言いますが、この還流が起きやすい形状が、バルジ型やランタン型と言われています。
還流が起こると、何度も加熱されて、再度蒸気になることを繰り返すため、余計なものが何度もそぎ落とされ、蒸気として上へ上っていきます。
そのため、バルジ型やランタン型で蒸留されたウイスキーは、ストレート型で蒸留したものよりライトな酒質になり、軽やかで華やかな味わいと表現されます。
還流って?
この還流について、イメージがつきにくい人は、料理の最中のお鍋のフタを思い出してください。
フタを閉めて、何か煮物やカレーなんかを温めていると、鍋のフタの内側に水蒸気がつきますよね?
そしてその水蒸気がぽとっと鍋の中へ落ちていくこともよく見るでしょう?
これこそが還流で、ウイスキーの蒸留器の中ではこういうことが起きているんです。
もうちょっと精密に言うと、温まった水蒸気が冷やされて、再び液体へ戻ること。といった感じ。
そのほかにもウイスキーの味わいに関係する要素
今回は、ウイスキーのヘッド部分の形状の違いによる、ウイスキーの味わいの変化についてご紹介しましたが、全てがこの法則のとおりにはならないのがウイスキー作りの面白いところだと思います。
例えば、ヘッド部分の形状のほかにも、下記の要素でウイスキーの味わいに変化が出ます。
- 大きさ
- ヘッドの長さや太さ
- ラインアームの長さ
- ラインアームの向き
- 加熱方法や温度管理の仕方
例えば、ポットスチルの大きさが小さめなのか大きいのか、それによってもウイスキーの仕上がりに関係があります。
ポットスチルの大きさが大きいものだと、ライトな酒質になり、逆に小さいものだとヘビーな酒質になります。
その他、ヘッドの長さが長いものであれば、蒸気が上に向かうにつれ冷えて液体となる確率が高くなり、ヘッド内部を伝って再度ポットの中に落ちるため還流が起こりやすく、ライトな酒質になります。
反対に、ヘッドの長さが短いものは、上った蒸気がすぐにラインアームへと流れていくので還流が起こりにくく、ヘビーな酒質になります。
そのほかにも、加熱方法や温度管理の仕方でも味わいに変化が出てきます。
加熱することで上がった蒸気はヘッド内部に溜まりますが、この際のヘッド部分の温度が低いか高いかで、還流するのか、蒸気のままラインアームへ行くのか決まります。
温度が低い場合、蒸気が冷やされ液体に変わり、ヘッド内部を伝って再びポットの中に落ちて加熱されます。(ライトな酒質)
温度が高いままヘッドに到達した蒸気は、そのままラインアームへ向かうので、ダイレクトな強い酒質を保ったままとなります。
このようにヘッドの形状だけではなく、その長さや太さや温度など、全ての条件が重なって、私たちが口にするウイスキーの味わいになるので、面白いですよね。
まとめ
今回は、ポットスチルの形状によるウイスキーの味わいの変化、について記事にしました。
説明が下手で申し訳ないのですが、今回の記事をおさらいするとこうです。
- ストレート型…ヘビーな酒質になりやすい
- バルジ型やランタン型…ライトな酒質になりやすい
- 還流が起こると、よりライトな酒質になりやすい。
- 還流の条件はさまざま。
ヘッドの形状だけで見ると、バルジ型やランタン型は、還流が起こりやすく、再度の加熱→蒸気→冷却→加熱…となりやすく華やかな味わいのウイスキーに仕上がる
- ポットスチルの大きさ
- ヘッドの長さや太さ
- ラインアームの長さや向き
- 加熱方法や温度管理の方法
これらの条件について厳密に解説することは、多分どんなウイスキー蒸留所の達人でも難しいんじゃないかと、個人的に思います。
それくらいポットスチルの形状も様々あり、どこの部分がどこの要素に関与しているかを全て理解するのは、「生まれてからずっとウイスキー作ってます」という人じゃないと難しいんだろうなと思いました。
ただ、ウイスキーの蒸留所の見学などに行くと「こちらの蒸留所では、ポットスチルの形状がストレート型なので力強い味わいになります」と簡単に説明が終わることが多く、ここの根拠が知りたかったので、今回はこの部分を中心に解説しました。
今回の記事で紹介した「還流が起きやすいか」「ウイスキーの蒸気の流れ」などをあらかじめ頭に入れておくと、ウイスキーの蒸留所見学に行った際も、内容が頭に入りやすくなりますし、楽しいと思います。
最後までお読みいただきましてありがとうございました。
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